309.5号室の海
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金曜日の夜。
少しの残業を終えて、会社を出たのが午後7時頃だった。
明日は休みだ。
朝から洗濯まわして掃除機かけて、天気よかったら布団干して、どこかに買い物でも行こうかと、頭の中で予定を組み立てながらの帰り道。
ふと思いついて、家の近くに最近出来たバーの前で足を止めた。オシャレな外見で、いつか来てみたいと思っていた場所だ。
…なんだかものすごく、お酒を飲みたい気分かもしれない。
温かみのある木製の”OPEN”と書かれた看板に誘われるように、フラフラと入り口のドアに手をかけた。
カランカランという心地の良い音が響く。そのすぐあとに、いらっしゃいませという店員の声がした。
中を覗くと、ほんのり暖色系の間接照明がよく似合う、落ち着いた雰囲気だった。
カウンター席、テーブル席、ソファー席、それぞれに人が腰かけている。
1人なので、カウンター席の1番奥にひっそりと座って、店内を見渡した。
所々に置かれた植物の色が、木を基調とした空間によく合っている。
「こんばんは、何にしましょうか」
ハッとカウンターの中を見ると、若い女の子の店員がニコニコとこちらを見ていた。
「えっと……じゃあ、サングリアを……」
「かしこまりました」
女の子がカウンターの奥の扉の向こうになにか声をかけた。すると、1人の男の子がそこからカウンター内に姿を見せた。
「……あっれー!?おねーさん、こないだの!」