これも恋と呼んでいいのか

「そ、それはナリくんから聞いてるんじゃあ…」


さすがに恥ずかしがる靖美。
女の子同士で改めて恋バナをするのは初めてだった。


「本人から聞きたいに決まってるじゃないですか!!後でナリくんのことはノロケますから!!」


すごく身を乗り出し聞いてくる。


「そ、そう?……あのね…」


古い本を真剣に探してくれたこと。


ドン臭い自分を雇ってくれたこと。


拐われたときも必死で探してくれたこと。


山に狩りに行ってくれたこと。


実は一目で好きになったことは、言わなかった。


そもそも、琉ヶ嵜の店に立ち寄ったのも、疲れ果て、雨宿りをしようと思った矢先の偶然だった。


どう考えても、そこにあるはずはないことは素人の靖美でも感じていた。


そして、それだけならどの店でもよかった。店はいくつか開いていた。


けれど、小さな柔らかい光に誘われるように、吸い込まれるように入っていた。


温かい飲み物を渡され、これからどうしよう、と、ぼんやりしながら、


琉ヶ嵜の手から、細い細い赤いものが、自分と繋がって見え、ふっと消えた。


気がした。


< 105 / 113 >

この作品をシェア

pagetop