これも恋と呼んでいいのか
「そ、それはナリくんから聞いてるんじゃあ…」
さすがに恥ずかしがる靖美。
女の子同士で改めて恋バナをするのは初めてだった。
「本人から聞きたいに決まってるじゃないですか!!後でナリくんのことはノロケますから!!」
すごく身を乗り出し聞いてくる。
「そ、そう?……あのね…」
古い本を真剣に探してくれたこと。
ドン臭い自分を雇ってくれたこと。
拐われたときも必死で探してくれたこと。
山に狩りに行ってくれたこと。
実は一目で好きになったことは、言わなかった。
そもそも、琉ヶ嵜の店に立ち寄ったのも、疲れ果て、雨宿りをしようと思った矢先の偶然だった。
どう考えても、そこにあるはずはないことは素人の靖美でも感じていた。
そして、それだけならどの店でもよかった。店はいくつか開いていた。
けれど、小さな柔らかい光に誘われるように、吸い込まれるように入っていた。
温かい飲み物を渡され、これからどうしよう、と、ぼんやりしながら、
琉ヶ嵜の手から、細い細い赤いものが、自分と繋がって見え、ふっと消えた。
気がした。