これも恋と呼んでいいのか
「あ~」
「あ~って何だよ」
琉ヶ嵜が思わず口に出してしまい、ハッと押さえる。
「考えたこともなかったです」
ねー、と靖美と業平。
「あっ、けど、こいつ、面倒臭いから、そういうのは、ないっすね。可愛いけど、残念なヒトっす」
面倒臭いとかお前が言うな、とムッとする。確かに残念なヒト、というのは頷けるが。
「よかったですね」
ゆきが琉ヶ嵜に囁き、ニヤニヤする。舌打ちし、手で払う。
「あっ、でも私、好きな人はできました。片想いなんですけど」
バサッと持っていた本を落とす琉ヶ嵜。返品用で奥に仕舞っていたものだ。
定期的に出る、週刊誌や月刊誌は新しいものが来ると、差し替えて、一旦、取り次ぎに返品する。
そのため、バックナンバー(先週号など)の取り寄せも、早ければ取り次ぎにあることがある。
「この本は、いつ出た分ですか?」
向こうの棚からまた別の客が声を掛ける。
「あっ、それは昨日っす」
立ち上がり、先に応えたのは業平だった。