これも恋と呼んでいいのか
夕方。本は入らなくとも日曜は客足も増える。
「靖美!!会いたかった!!」
いきなり入ってきた若い男に抱きつかれ、驚く靖美。接客していた琉ヶ嵜が、ぎょっとする。
「あ、あの、どちら様ですか?!」
思わず客を放置した琉ヶ嵜。無意識に言葉がきつくなる。
「痛いよ、亮ちゃん」
「りょ…」
またなんだか、やたら親しげなイケメンに、ムッとする。
小綺麗な感じの、お洒落なジャケットにデニム姿だ。
「この人は?」
なんとなく気分を害したイケメンが、靖美の背中に手を回す。
「あっ、店長さんよ」
「琉ヶ嵜です」
つっけんどんに応える。
「お父ちゃん!?お母ちゃんまで!?どうしたん」
「おと…」
「どうしたんやないわ。ろくに連絡もよこさんと。心配するやないか!!」
田舎から出てきたらしく、年配の小柄な男性と同様に年配の女性が入って来た。
元から品はありそうだが、街に出てくるということで、とくに母らしい女性はそれなりに気合いが入っている。
「お口に合うかわかりませんが」
そう言って母が、紙袋の手土産を琉ヶ嵜に渡す。
「えっ!?あっ、どうもすみません!気を使わせてしまって」
父が店内を見渡す。
「なかなか繁盛してますな」
「い、いえ、ぼちぼちです」
妙に緊張する琉ヶ嵜。