これも恋と呼んでいいのか
「好きな人がいるんなら、その人の方がいいんじゃないか?」
阿智にやすやす取られたくはない、と思わず口に出てしまい、しまったと思った。
「えっ!?そうなの??靖美」
母も食いつく。
「そ、それは、そんなこと、ここで言わないでくださいよ!!店長さん!!」
珍しく赤くなって拗ねる靖美。
「わ、悪い…」
「嘘だから!!いないから!!そんな人!!」
ふん、とそっぽを向くと、そこからひと言も口を聞かなくなってしまった。
「あの、お嬢さんにはよく働いてもらって、助かってます本当に」
「そりゃそうや。ワシらの自慢の娘やけんな」
酔いが回ってきたのか、少し父の機嫌が戻ってきた。
「不器用で、要領の悪い子ですけど、よろしくお願いします」
「あっ、いえ、こちらこそ」
「そやから言うて、娘はやらんぞ」
「もう!!お父さんたら!店長さんだって一緒にお仕事してるだけなんですから。ねえ?」
「も、もちろんです。ははは」
そらぞらしく笑いが乾く。
まずい。なんだかどんどん不利になっている。