これも恋と呼んでいいのか
「拉致って!?警察に連絡した方が!!」
母がパニックになり、父も母の肩を抱き、狼狽える。
「そいつに心当たりは??」
「一度だけ、追加で頼みたいとかで来たが、初めて見た顔だ…連絡先も久我のメモでしかわからん」
「どんな感じの人でした?」
「…小綺麗なスーツ姿の、30代の男だった。会社員というよりはどっかの会社でも経営してそうな」
「携帯にGPSの設定なんてしてないだろうし」
「ああ、電源も落とされてる。水没させたか…」
靖美の携帯に掛けたが、もちろん繋がらない。
「帰ってノートパソコン持ってきます。スマホだと限界あるんで」
「ああ、頼んだ。一応そこの交番にも相談してみる。この辺りでそういう人物、手懸かりは…何かあるだろ、俺!!」
動揺し、頭を掻きむしる琉ヶ嵜。
業平が急いで身支度し、前に止めてある原付に走った。
「ああ…靖美…」
母が崩れてしまった。