これも恋と呼んでいいのか
「店長さん、これ…」
店に帰ると業平が見せた本があった。商品が届いていた。取り次ぎに在庫がなく、版元までいったものだ。
客注品は、専用の短冊綴りの分厚い冊子に纏めて書いて取り次ぎに送る。
この前靖美がなくしたメモのタイトルが書かれていた。しかも担当した本人の手書きだ。
「頼んでたんじゃねえか…」
客の名前と、ご丁寧に市外局番から固定電話の番号が書かれている。住所が分かったも同然だ。
結局、GPSだの技術が進歩しても、いざとなると人間の癖や原始的なことが案外ヒントに繋がる。
今は携帯番号しか書かない者もいる。恐らく本人の無意識の癖だろう。
「メモメモっつったから、預かった紙のことばっか考えてたのか、あいつらしいな」
ど天然が思わぬところで役に立った。
ふっ、と思わず笑みがこぼれた琉ヶ嵜。
手懸かりがひとつ出来た。
「あと、これも」
業平が持ってきたノートパソコンの画面には、例の紳士が腕組みした写真があった。
名前から割り出したホームページで会社が出たのだ。
[URIUインターナショナル社長]と、肩書きがあった。
「瓜生…」
「やっぱ、会社の社長さんでしたね」