これも恋と呼んでいいのか
都心に程近い高層マンションの一室に、瓜生の部屋はあった。
あの邸宅は亡き祖父から継いだ物で、別荘にしていた。
帰宅した瓜生がネクタイを外し、ソファーベッドに身を沈めたとき、インターホンが鳴った。
「はい」
モニター画面に琉ヶ嵜が映った。1階のロビー入り口は、オートロックだった。
「本屋です。本をお届けに」
「あの本は、いらないと言ったはずですが」
「あの出版社の本は買い切り品なので、お買い取り頂かないとうちも困るんですが。参りましたねえ」
わざとらしく困って見せる。
小規模で必要以上に在庫を抱えない出版社や商品がある。
客からいらないと言われれば、在庫にするしかないが、普通はここまで無理強いしない。
「知りませんよそんなこと」
「頼まれたからには、買って頂かないと。買って頂くまで何度でも伺いますが」
ちっ、と舌打ちすると、
「どうぞ」
ドアロックを解除する。