これも恋と呼んでいいのか


「どうしてここがわかったんです?」


「うちの久我が発注書に書いてあったご連絡先から。ご実家の番号なんですね。そうしたらここにはいないからと」


やはり昔からの癖で実家の番号を書いてしまったらしい。


無愛想に、瓜生が財布を出すと代金を支払う。


「お急ぎのようなので、とお伝えしたら、こちらを教えて下さいまして。社長さんなんですね。凄いですねその若さで」


個人情報やプライバシーの問題もあり、普通ならここまでしないし、こんな事態になっているとも思うまい。


あくまでも相手は客だ。
が、笑顔の裏で琉ヶ嵜は本気で怒っていた。


つべこべ言わずに久我を返せ、と喉元まで出ていた言葉を飲み込む。


警察でも弁護士でも、呼べるもんなら呼んでみろと。


広いなあ、とわざとらしく室内を見渡す琉ヶ嵜。靖美がいる気配はない。


目の前のだだっ広いリビングにある、壁一杯の一枚ガラスの向こうに輝く夜景が見えた。


「景色も綺麗ですね」


舌打ちする。


「本はもらいました。お引き取り願えませんか」


「そうはいきません」


あくまでも笑顔で、


「うちの久我が、お世話になってるようで。一緒に引き取りたいと」



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