これも恋と呼んでいいのか

「ずいぶん前にね…」


「どこでです??」


食べながら。箸の持ち方もきちんとし、食べ方も行儀よく、綺麗に食べる靖美だった。


「家政婦をしていた頃かな」


「そんなに前ですか??」


かれこれ1年半くらいか。


「貴女の仕事先の、家の前を毎日通って仕事に行っていた」


「じゃあ、あの辺の方なんですね」


「夏の夕方、玄関で水撒きしてる姿を見て、いいなって思った」


「なんでもないことですけどね」


ふと、


「瓜生さんは、恋人やご家族は?」


「恋人は、いないからなってって言ってるんでしょう?」


「すみません。ご期待に添えなくて」


「気持ちは変わらないか。あっさり振られたもんだな」


「すみません」


「家族は、ここにはいない。ここは祖父の旧家を別荘にしてる」


「あ~だからどなたもいらっしゃらないんですね。こんな広いお屋敷に、お一人で」


「住居は別にあるよ」


「お掃除大変じゃないですか!?そちらもしましょうか??」


「いや、それはいい」


またあいつが、来るかもしれない。


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