これも恋と呼んでいいのか

自転車で、隣町にある母校の中学校に来ていた靖美。手には一眼レフを持っていた。
年季の入ったものを大事そうに。


とてもいい天気で気候もいい。
少し動くと汗ばむ陽気だ。


校舎の前に校庭があり、その横に道路を隔てて広めのグラウンドと松林、その向こうには海があった。
松林は防波堤の役割もしている。


生徒数も都会に比べれば少ないようで、野球部の生徒が練習しているくらいで、ひと気はほとんどない。


半袖に長袖のシャツを腰に巻き、カメラを構える。カシャンカシャンとシャッターが切られる。


「いい空気だな」


空気に酔いしれていた靖美が、声にビクッとする。


「な、な、なにか」


「…悪かったな。お前の気持ちも聞かないで、……その、ぷ、プロポーズ、までしちまったらしいな。……けど、本心だからな一応」


「…さては、また騙されましたね」


「えっ?」



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