これも恋と呼んでいいのか
田舎では
「暇さえあればカメラ片手にふらっとどこかにいってしまうので」
勝手にいなくなる子じゃないと聞いたはずだが。
「あっ、暗室じゃないっすか?」
「ああ、そうかもしれんね」
「何でお前が知ってるんだ…」
「店長さんが潰れてる間にいろいろ教えてもらって。現像する暗室も自前で作ったらしいっすよ爺ちゃん」
徹底してこだわっている。撮るのが専門ではないのか。
「裏の納屋の隣にありますが、今はまだいかん方がええでしょうね。邪魔になりますけん」
聞いたことはある。迂闊に開けると光でフィルムが駄目になるとか。
「急ぎませんし、いいですよ」
言って、業平を小突く。
「他に何か聞いてないのか」
「自分で聞きゃあいいじゃないっすか」
うむむ、と唸る。まあそれもそうだ。これ以上人伝てに聞くのも癪だ。
「出来ましたよ」
靖美が現像したばかりの写真を持ってきた。