永遠dream

⑤〜優しい手〜

  それから俺は宛もなく歩き続けた。

もう、とっくに冷たくなった彼女を抱えて。

その途中で雨に降られる。

俺は良かったが彼女の冷たい頬に雫が落ちたのを見てどこかで雨宿りしようと決めた。

そこから街の方に歩くと、いつの間にか目の前にはアパートがあった。

人気のないその建物に一つだけ割れている窓を見つける。

とても人が住んでいるようには思えない。

それに安心を覚えた。

軽く飛んで、2階の窓から部屋に入る。

しかし人間の部屋はどうも落ち着かず俺はクローゼットの中で未だに血の海をつくる彼女をそっと撫でた。

それでも肌は綺麗で、もしかしたら生き返るのではないかと、ありえないことを考えた。


  その後ここの大家――野沢涼子の優しさに救われた俺は住民としてここにとどまることにした。
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