永遠dream

⑥〜震える手〜

萌々が帰り、俺はクローゼットの扉に手を掛けた。

情けなく震える指と葛藤したのち、その扉を開く。

彼女の香りが・・・・・・優しく舞った。

彼女の血の香りを吸い込んで、そこに腰を下ろす。

俺がいなければ彼女は今も笑っていただろう。

そこに広がる自分に対しての嫌悪感は今も変わらない。

今まで彼女との思い出をすべて『悲劇』として記憶の中に閉じ込めた。

けれど・・・

春には桜が咲き、夏には向日葵が揺れ、秋には山が赤く染まり、冬には真っ白な雪が降る。

そんな何千年も見続けていたはずの当たり前の景色を、こんなにも美しく彩ったのは君だ。

大丈夫、君に会えて俺はちゃんと幸せだった。


今なら、そう思える。
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