永遠dream

⑤~そらした視線~

    ガチャ――――

私はレイさんを部屋に招き入れる。

「……よくわかったね。私が襲われてるって。」

 「…………あぁ。」

返事はしたものの、話は全然頭に入っていないようだった。
さっきから、ずっと何かを思いつめているようだ。

表情が暗い。
まぁ、こんな事があって笑っていたらそっちの方がおかしいんだけど。

…………私のせいだ。

私のせいで何かを思い出したのだろう。
何か辛い思い出を……。
暗い顔のまま会話が続く。

「なんでわかったの?」

 「……萌々の匂いがしたから。」

私の匂い…………?

私はいそいで匂いを嗅いだ。
でも、自分の匂いなんかわからない。

 「違う、萌々の血の匂いだ。」

あ…………肩の……。

私は自分の肩を見た。
制服の白シャツがそこだけ赤く染まっている。

さっきの出来事を反芻し、改めて恐怖を感じる。

 「ヒトよりも鼻がいいんだ。」

レイさんはそう付け加えた。

沈黙が続く。

最初にその沈黙を破ったのはレイさんだった。

 「なんで、こんな遅くになったんだよ……!」

押し殺した声。
私は一瞬息が詰まった。

え…………?

いつの間にかその言葉には感情がこもっていた。
それに驚き彼を見ると、少しだけ目が合った。
でも彼は、口ごもってすぐにそっぽを向いてしまう。

あぁ、この人は心配なんだ。
心配してくれてるんだ。

そして…………

怖いんだろうな。
何かを失うのが。

私は彼の近くに寄っていった。
ヴァンパイアの肌だって、ちゃんと温かい。

「…………大丈夫……大丈夫だよ。」

そっと肩に手をまわして呟いた。

「私は……ここにいるから。」

レイさんはようやく肩の力が抜けたようだった。
彼の手が私の手にそっと触れた。


 「肩出して?」

そう言うとレイさんは、私の血が出てる方の肩を指さした。

「え…………うん。」

私が言われるがままに肩を出すと、彼は私の傷に手を当てた。
そして力を込める。

「…………っ……!」

 「ごめん、ちょっと我慢して。」

 「……終わったよ。」
しばらくの間私に触れていた手を離し、レイさんが言った。

…………?

私は肩にそっと手をあてる。

「治ってる…………。ありがとう。」

 「萌々の体に傷が残ったら大変だからな。」

彼が、そう言って笑った。


優しい笑顔だった。
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