永遠dream
  牙が離れる。

 「はぁ…………。」

私たちは息をついた。

私は、私の上に倒れ込んだレイさんに質問を投げかけた。

「どうして今だったの…………?」

少し間を置いてからレイさんが答える。

 「丁度、飢えの時期だったんだ。」

飢え…………?

「そんなにすぐ来るものなの?」

心の中で思ったつもりが言葉になって漏れていた。

何故かこれが言ってはいけない言葉な気がして、私は慌てて口を塞いだ。

レイさんは起き上がって私に手を差しのべる。
そして私が起き上がると、今度は背中にもたれかかってきた。

 「…………わからない。俺も、こんなに早いのは初めてだ。」

レイさん自身もわからないんだ…………

 「ただただ苦しくて、気がついたら勝手に部屋に入ってた。それで…………びっくりしたよな、ごめん。」

そう言って弱々しく笑う彼の声を聞くと、胸が痛んだ。

ねぇレイさん、今どんな顔してる?

顔が見たいな。

でも今は、この体勢を崩してはいけない気がする。

背中合わせで体温は伝わっても、私の視界の中にレイさんはいない。

それがひどく悲しい事のように思えた。

かける言葉が見当たらない。

どんな言葉をかけるのが正解なんだろう。

背中越しに伝わればいいのにな。


結局私は、最後まで黙ったままだった。
< 35 / 200 >

この作品をシェア

pagetop