永遠dream
月1万円、ほんとうかなぁ。

とりあえずアパートの横の管理人室と書かれた小さな小屋に声をかける。

「・・・あの~、誰か・・・・・・」

「おう!若いネーチャンがこんな所来てどうした。」

こんな所・・・・・・?

「おっといけねぇ、で、どうした?」

「あ、えっと、私今日からここに住ませていただきます、空木 萌々といいます。202号室に住むと言ったらわかると言われました。」

すると管理人さんは目を丸くしたあと、それを隠すように話を続けた。

「おお、あんたがそうか。ほらよ。」

そう言って渡されたのは受話器だった。

「お前の知り合いの不動産会社の社長に繋がる。まぁ、頑張りな。」



私は恐る恐る受話器を耳にあてる。

「・・・・・・お電話替わりました。」

「あら、貴女が萌々ちゃん?電話越しでごめんなさいね。私は野澤 涼子と言います。貴女のお母さんとは仲良くさせて頂いてるわ。」

電話の向こうの柔らかい声に、私は少しほっとした。

「今日からよろしくお願いします。それで、えっと、あの・・・・・・水道代や電気代、ガス代などが込みで家賃1万円と聞いたのですが本当にいいのでしょうか?」

「ええ、それは全然構わないわ。その部屋ちょっといろいろあってね・・・・・・。うん、まぁ何も起きないといいんだけど、危険だから気をつけてね。」

それが部屋を貸す人の言う言葉だろうか。

「・・・じゃあ、失礼します。」

「あ、そうそう!203号室には絶対に近づかないでね。」

ガチャ!ツ――ツ――ツ――・・・

理由を教えてよ、理由を・・・・・・

「あーこれ、お返ししますね・・・・・・」

そう言って受話器を渡すと、私はアパートに足を踏み入れた。


黄昏時。

陽の光がアパートの廊下を赤く染めている。

・・・・・・・・・不気味だ。

ガチャ―――・・・

今日からここが私の家・・・。

もう既に、荷物は届いていた。

部屋は思ったより広くて綺麗だ。

大きな窓もある。

「・・・ん―――・・・・・・」

私は大きく伸びをした。





思えば、この時が1番平和だった。

このあと私は、“頑張れ”の言葉や月1万円の意味を知ることとなる。
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