その手に錠をはめるまで



『あたし、大丈夫です。


1人でいいんです』



少女のその言葉に、周りがわっと騒ぎ出す。



『なんでっ!?


まだ小さいのよ?


たったの5歳でできることなんて限られているのよ?』



『それでもっ、あの家が、あそこだけが、あたしの大切なところだからっ』



『はぁ、分かった。


なら、毎晩俺の家に来ること。


それができるなら、あの家で暮らすことを許してやる』



『できるっ!


絶対できる、約束は破らないからっ』



その言葉で、少女のこれからの生活が決まったのだった。


それでも、少女の内の中には、誰にも気づかれないような、そんな深い深い憎悪が宿っていた。



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