その手に錠をはめるまで



「それにしても、この黒髪、いいよね~」



萌恵奈があたしの髪を少しだけ触って言う。



「それを言ったら萌恵奈の茶髪もいいでしょ」



そう、あたしが黒髪なのに対して萌恵奈は綺麗な茶髪。


天然色だと分かる程度に茶色。


黒も好きだけど、萌恵奈の茶もなかなかに好きだ。



「えーっ、あたし響姫に生まれたかったぁ!」



もしあたしに生まれていたら、きっと深い絶望を味わって、強い復讐心を抱くようになってしまうだろう。


ダメだよ、そんなの。


綺麗なはずの萌恵奈が、汚い心にまみれてしまったら。


こんなの、あたしだけでいい。



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