その手に錠をはめるまで


だからこうやって猫をかぶって媚びているのに。



「あ?


食うわけねーだろ」



そう言った彼は心底イヤそうな顔をして、この場を去っていった。



「はーっ、何あれ!


リツっていう人、すっごくムカつく!」



萌恵奈が小さめの声で怒りをあらわにする。



「だってさっ、あたしたちは仕方なく相手してんのに、イヤそうな顔されるとか!」



ありえないっ、呟く萌恵奈をなんとか宥める。


落ち着け、萌恵奈。



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