その手に錠をはめるまで
「そうか、“R”か」
呟いた漆黒の男は、少し悲しげな顔をしている。
それでも、よく言ってくれたと、漆黒の男は男たちを褒める。
「俺たちっ、変わってみせますっ」
「あなたのように、見てくれている人がいるって分かったから・・・・・・。
これからも、俺たちを見ていていただけませんか?」
その素直な言葉に漆黒の男は内心驚きつつも、ふっと笑って言う。
「ああ。
俺はあんたたちをいつでも見ている」
それは一種脅しのような言葉なのに、漆黒の男の優しげな表情からか、だれ1人としてそれを思う人はいない。
「俺たちを、こんな俺たちを見捨てずにいてくれて、本当にありがとうございます!!」
「できれば、お名前を教えてもらいたいです!」
「さあ。
俺は誰でもない」
そう言って漆黒の男はその場を去っていった。