その手に錠をはめるまで


だけど、あたしは見て見ぬふりをする。



「ああ、そうかもしれないな。


どっちにしろ、Rが残酷な奴だってことには変わりない」



そう言った雨は、少し憎しみのこもった眼をする。


その瞳を見て、あたしは安心する。


ああ、雨もあたしと一緒、あたしと一緒で雨もRを憎んでいる。


あたしだけが抱くような思いじゃなくて、雨でさえも抱くようなそんな感情なんだと思える。


雨も一緒、それにどれだけ安心しているか雨は気づいていない。



「そうだよ、だからあたしたちの手でRを仕留める。


たとえ、この手を血で染めたとしても、ね」



それほど憎んでいる、どんなことがあったって許してやれない。


ああ、と呟く雨は雨らしくもなくしおらしい。



「それで?


あたしにどうしろって?」



そう聞いたあたしに、雨はオムライスの最後の一口を飲み込んで口を開く。



「意味のない犯罪で人が傷つく必要はない。


だから、それを止める」



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