その手に錠をはめるまで


あたしもやっと最後の一口になったオムライスを胃に流し込んで、雨を見る。



「情報、ありがと」



お互い交わってはいけない関係なのに、それでも一緒にいたいと思うのは職業なんぞに関係なく、ただあたし自身を見てくれるからなのかもしれない。


それは、すごく嬉しいことで、でも言葉にするのは憚られる。



「言っただろ。


初めて会ったあの日から、“それが強い望みなら協力しよう”って。


今でもそれは変わらない。


いつまでも協力してやる」



そうだ。


その言葉通り、雨はあたしに協力をしてくれている。


どんな時だって、あたしを見捨てずにいてくれる。


困った時にはいつだって雨が傍にいたし、いつだってあたしのことを真っ先に考えてくれる。


あの日あの時、感情を感じることさえも苦手になってしまったあたしに、“温かい”を教えてくれたのは雨だった。


雨と出会った日はすごく冷たい日だったのに、それでも“温かい”を感じることができた。



「そうだね、あたしも雨を助けるって、決めたから」



直接雨には言っていなかったけど、本心だ。


雨色に沈んだ瞳に、いつか澄んだ空の色になりますようにと強く思ったんだ。



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