その手に錠をはめるまで


あれからしばらくして雨はすぐにここを出たけど、それとすれ違いのようなタイミングで萌恵奈が家に来た。


・・・・・・あれ、2人ともホントにすれ違わなかったのかな。


不思議に思いつつもあたしはとりあえず萌恵奈を中に入れた。



「誰かに会ったりした?」



家に入れてから唐突なその言葉に驚いたのか、しばらく固まっていた萌恵奈。



「えっ、うんんっ、誰とも会わなかったと思うよ??」



・・・・・・雨、どうやってここを出たの。



「そっか。


で、どうしたの?」



その言葉にもぴきっと固まる萌恵奈。


うーん、何かを忘れている気がする。



「あたしが今何を着ているか分かる?」



「うん、何って制服」



そんな簡単な問いに、どうしたこいつという目を向けながらも答える。



「あたし、学校に行くんだ」



「へー、行ってらっしゃい」



さすがのあたしでも薄々勘づいてきたけど、これは言えたもんじゃない。


とりあえず、何も知らないふりをしていよう。



「うん行ってきま・・・・・・」



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