その手に錠をはめるまで


警察の端くれなんだから、人の闇を少しは垣間見ているけど、昴は本当に危険すぎる仕事は絶対にやらせない。


萌恵奈にはまだ防御能力が完璧に身についているわけじゃなくて、だからこそ、あたしのような危ない橋を渡らせたりはしない。


それに、実の娘と面倒を見てやっている女とは、全然わけが違う。


そういうものだ。


昴だってあたしに対等な優しさを見せているようだけど、それが全てなわけがない。


親友の娘、近所の女の子、娘の友達。


思い方はいくらでもある。


きっとそれらの全てとして昴はあたしを見ている。


全てが全て完璧に割り切れる人間なんていない。


だってそうでしょ。


あたしは少し面倒を見てもらっているだけの、ただの女なんだから。



< 128 / 169 >

この作品をシェア

pagetop