その手に錠をはめるまで


まるで責められているようだ。


あたしから電話なんて仕事以外では絶対にするはずがないと分かっているからこその電話。


あたしに何かあったら、雨が絶対に気づいてくれる。


そう分かっているから自分からは電話しないのかもしれない。



「うん、」




『隣にいる櫻井萌恵奈のせいだろう?』



どこまでもお見通しの雨に、あたしは微笑んでいた。



「でも、ちょっと違うかも。


その子の父親の愛について考えていたせい、かも」




『櫻井昴の方か。


どうしてそうやって震えるのを我慢してまで俺に言ってくれないんだ。


今すぐにでも行ってやるのに』




< 131 / 169 >

この作品をシェア

pagetop