その手に錠をはめるまで
昴は今、Rを取り締まる管轄をしていて、あたしも密かにその1人である。
その昴でさえも、Rには苦戦しているのだから、よほどの強者。
日本中の警察官でさえつかめないほどの奴なら、海外に協力を要請すればいいと思うのはあたしだけなのか。
「萌恵奈、そろそろ行こ」
静かに呟いて、あたしと萌恵奈は教室に向かう。
この騒がしさの中、静かに気配を消して通れば誰1人として気づかないだろう。
人の合間を縫っていけば、ふと感じた視線。
振り返ったらダメな気がする、だけどどうしても抗えずにあたしは振り向いた。
「・・・・・・リツ、」
視線の先は騒がれている張本人だ。
どうして見られているの?
そんなバカな。
気配はこんなに消しているし、それなのに、どうしてこんな・・・・・・っ。
そうか、リツは眼がいいんだ。
そうだとでも言うように、リツはニヤリと口角を上げていた。