その手に錠をはめるまで



あたしの言葉にうっと詰まらせた萌恵奈は、イヤそうな顔をしながらもどこか嬉しそうな顔であたしを見てくる。


どうしよう、もしかしてこの子マゾ??



「いつもいつもあたしのお金ばかり使って・・・・・・。


響姫の方がたくさんお金もらってるでしょ?」



それはまあ、そうといえばそうだけど。



「人の懐事情ばっか探ってないで、萌恵奈も仕事をしろ、仕事を」



あたしは萌恵奈よりも仕事量が3倍近く多い。


それは一重に萌恵奈は事故現場なんかに慣れないからである。


殺人が起こるのは常日頃、事故が起こるのも常日頃。


そして何より、遺族の方々に泣いて縋られるのも常日頃なのだ。


そんな現場で感情移入しやすい萌恵奈がいれば、足手まといになるのは当然。


そして何度か吐いたりしてしまうから、萌恵奈だったら仕事にならない。


犯人を検挙するとかなら、全然大丈夫なんだけど・・・・・・。


それでも、そういう時は昴がすごく心配するらしい。



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