その手に錠をはめるまで


よかった、急いだかいがあって、担任は廊下を歩行中だ。



「すみません、先生・・・・・・」



小さくか弱い女子の声で近づいてみると、優しい顔をしてどうしましたか、と振り返る担任。


あたしを視界に入れたとたん、さあっと顔から血の気が失せたのは気にしないようにしよう。


というかその反応でバレバレだって。



「どうしてここにいるの?」



その一言で諦めたような顔をして、あたしを廊下から人目のつかない空き教室に押し入れる。



「うわっ、教師が生徒を連れ込んでるみたいっ」



つい声を上げてしまった。


ごめん、本当に。


悪気はないんだけど、そういう話題にはちょっと顔が熱くなりやすいんだよね聖(ひじり)は。



「っっ、お前はなんてことをそんなッッ」



赤面しまくってるし、言葉が出てこないようだけど、大丈夫??



「す、昴さんに頼まれてんだよ、俺。


元の担任は加賀美が入ってくるちょっと前に入院ってことにして、代わりに俺が入ることになったんだ。


一応趣味で教員免許持ってるしな」



ほらね、やっぱり、こういうことには暇な奴が出払わないといけないんだよね。


多趣味もいいところだけど、暇ですってアピールしているようなもの。


他にも料理免許やプロバーテンダー、オーナースペシャリストとか、いろんなのを持っている。



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