その手に錠をはめるまで
「初めの内、響姫はあまり学校に来てくれなかったから、寂しくて。
いい教師面するのも面倒くさくて。
だけど、俺たちが要注意人物としている加賀美が学校に来れば、お前も来るんじゃないかって思ってたから」
それは大方当たりだけど、あたしは昴に行けって言われたから来たわけで。
誰からも同じ学校に通うって聞いてなかったから、本当は行くつもりもなかったんだよね。
「やっと来たと思ったら加賀美なんかに色目使うし。
それだけじゃなくて俺のことにも気づいてなかったから・・・・・・・本当はずっと耐えられなかったんだ。
だけど、俺には俺の任務があるから、あまり気づかれたくなかったっていうのも本当だよ」
まるで恋人のような言葉だと思うかもしれないけど彼自身にはそのつもりは一切ない。
よってあたしにもそのつもりは一切ない。
ただ聖がどうにかなりそうだった時に傍にいてあげたのがあたしっていうだけの話。
懐かれてしまった上に、あたしを追ってあたしと同じ警察になって同じ部署にまで入るんだから、最早ストーカーの域だ。
でも、聖は思った以上に優秀だったから、誰からも邪魔者扱いはされなかった。
顔はいいし、人柄も優しいし気さくだから、いろんな人に気に入られてもっと上の部署に行けたはずだったんだけど、生憎あたしを追ってきただけだから本人は辞退しちゃって。