その手に錠をはめるまで


目の前にいる男は緩々と余裕の笑みを浮かべて笑っている。


それでもどこか、覚悟を決めたかのような目にあたしは結局根負けして。



「分かったよ。


だけど、お互い自分の任務をしっかりしてあまり干渉しないこと。


これが守れるならいいことにする」



そう言ったあたしに嬉しそうに頷いて、さっさと出て行った聖。


はあ、そういえばちょっと前にチャイムが鳴った気がしたけど、もしかして・・・・・・。


あたしの予感は見事に的中、今は1時間目を35分過ぎたところだ。


あーあ、1時間目が終わるまで教室に入れないじゃない。


今から保健室にでも行って、1時間目は病欠ってことにしようかな。


一々授業を休むのには、正規の紙をもらわないといけないのが面倒くさい。


だけどまあ仕方がない。


そう思い込んで保健室に向かう。


ガラリとドアを開けて出ようとした瞬間、何かの気配を感じる。


殺気ではないけど、何かこうじっと何の感情もなく見られているような。


でもこの学校ではあたしは一般人だ。


溶け込むように努力するべきで、つまりそれはこの気配に耐えて気づかないふりをしなければならないということ。



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