その手に錠をはめるまで


絶対に気づかれない確信がある。


だってあたしはレイではないから。


あたしはあたしだ、それだけは変わらない事実。



「リ、ツ様・・・・・・?」



少し甘い声で、でも少し不安がっているような怖がっているようなもっともらしい反応をする。


リツは険しい顔をして、あたしを睨むようにして見る。


怖いと恐怖を抱かないわけがない・・・・・・それが普通の反応というものだ。



「お前、本当に今朝の女か?」



あたしの模範的なまでの反応に、リツは自分の眼すらも疑う始末。


今まで幾度となくそんな反応をされたリツからしてみれば、あたしは少し違うかもしれないと期待していたのかもしれない。


こんなはずじゃない、俺が望んでいたのはもっと違う反応をしてくれる奴だ、と彼の眼は訴えかけてくる。



「リツ様ぁ、今日暇ですかぁ?」



こういう反応でもしないと、彼はあたしを気に入ってしまうだろう。


素はこんなことを言える人間ではないからだ。



「ちっ、お前も大して他の女と変わんねぇ。


視線に気づけてもただの女だな」



はんっと効果音が付きそうなくらいふんぞり返っているリツに、早く行ってくれと心の内で思う。



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