その手に錠をはめるまで
これはきっと、あの人だ。
あの人しかいない。
「なんで笑ってんのよー!」
怒ろうとしているようだけど、顔が笑っているしあまり説得力がない。
にやっと笑ってから、あたしもスマホを取り出す。
その途端、タイミングを図ったかのように震えたスマホ。
「ん?
メールが来たの?」
「そうみたいだね」
はあっとため息をついて、メールを開けば、思った通りの人からだった。
差出人はやっぱり雨で。
もうっ、こういう時だけいろいろやってくるんだから。
《よく眠れた?
あまり根を詰めすぎるなよ。
お察しの通り、俺が櫻井萌恵奈に送っておいた。
勝手かもしれないけど、もうちょっと親友を頼ってやれよ。
それに、櫻井萌恵奈は心配してソワソワしてたぞ》
そんなんじゃ萌恵奈、任務を全うしたとは言わないって。
そう思いながらくすっと笑って、萌恵奈にありがとうと伝えた。
この際、どこでもかしこでも雨の目があるということなんて気にしない。
そんなのずっと前から分かっていたことだし。