その手に錠をはめるまで
雨の目から逃れようなんて思っていないし、むしろここまで来て見られていなかったら逆に寂しいと感じてしまう。
別にただそう思うだけだから大して深い意味はないけど。
「帰ろっか」
少し笑った後そう言って、萌恵奈と保健室を出る。
「響姫の髪っていっつも寝癖つかないよね~」
どうしてだろ、なんて言う彼女に思わず吹き出す。
そりゃあ人より寝癖はつかないほうだけど、ふっ、萌恵奈は少々特別だもんね。
人より寝癖が付きやすいとかそういうレベルに収められないほどはっきり言ってヤバい。
寝起きから30分は寝癖直しに時間をかけるほどには、ね。
「もうっ、失礼なこと考えてるでしょーー!
響姫ってば分かりやすいんだからっ」
あたしは分かりやすいらしい。