その手に錠をはめるまで


ガラっとバカでかい音がしたと思ったら、そこに現れたのは聖だった。



「ッ、響姫っっ、大丈夫!?」



何を勘違いしたのかこの男はあたしが病気で寝ていたのだと思っていたらしい。


でなければこんなに慌てないでしょ。


眉を顰めたあたしを見てまた何かを勘違いしたのか、俺がもっと響姫を見ていれば、とか言ってやがる。



「うるさい」



うるさいよ聖。


面倒くさくなったあたしは呟いて聖の顔を見つめる。



「元気、なの?」



子犬のようにしょんぼりとした顔で聞いてきたものだから、あたしはこくこくと思いっきり顔を縦に振る。


聖はあたしの体調の変化に2番目に敏感な奴だ。


そんな聖が見抜けなかったとなれば落ち込むのも無理はない。


実際は病気でも何でもないから落ち込む要素なんてどこにもないんだけど。



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