その手に錠をはめるまで


ふっと笑うと聖はよかったと安堵の息を漏らした。



「もし響姫に何かあったら俺ッ、もう生きていけないから・・・・・・」



聖を拾ったあの時は目すらも合わせてくれなかったのに、今では私にウザったいほど懐いている。


私なしでは生きていけないと切に言う彼を見ていると、やっぱり雨色に染まった瞳を持つ男を思い出す。



「馬鹿言っていないできちんと生きて。


じゃないと私聖のこと嫌いになっちゃうよ?」



少しの殺気を込めて彼を死なせないように脅しをかける。



「ッッ、分かっ、てる、」



分かっているのならそれでいい。


もう私についてこなくていいのに聖はいつも私の背中を追いかけている気がする。


前に進んでほしい、だなんて聖にとっては酷なことなのかな。


面と向かってそんなことを言えない私は相当聖のことが好きらしい。



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