その手に錠をはめるまで
ってことは警察!? っていう言葉を発そうとして、それでも何とか堪えた萌恵奈に拍手を送ってやりたい。
偉い偉い。
誰が聞いているかも分からないこの状態であたしたちはおめおめと正体を晒すなんてできやしない。
「あたしのとこで働いてるから、萌恵奈は知らなくてもしょうがないのかもね」
「そうだったんですか・・・・・・三枝先生はナチュラルに赴任してきたから・・・・・・」
そりゃあそうだろうね。
リツが転入してくる1か月前にはここの教師をやっていたらしいし。
自然だと思うのが妥当だろう。
「加賀美のこと、頼みますね2人とも」
急に先生らしい態度になった聖と目を合わせて頷いて、どうしたのかとあたしたちを見る萌恵奈にすっと視線を送る。
「はぁーい、加賀美君ともっと仲良くなりたいんで先生も協力してよ~?」
少し伸ばした声に気付いたのか視線で分かったのかは分からないけど、とにかく萌恵奈も乗ってくれるようだ。
「そうだよ~、加賀美君とかすっごくイケメンだしぃ!」
萌恵奈もあたし同様に伸ばした声を出してきちんと加賀美リツが好きな女子を演じる。
同時にドアの外からちっという舌打ちが聞こえてきて、隠す気がないのか足音を残しながら奴は歩いて行った。