その手に錠をはめるまで
でかい扉だけど、そんなに装飾が派手なわけでもない。
何かこう、イヤな予感がしてならない。
ゆっくりと扉を開いていくこいつに、嫌味の1つでも言ってやりたい。
言ってやりたいのに、無理だ。
声が出せない。
ここの雰囲気にのまされていて、全然無理。
隙間から見える黒い空間。
電気の1つもついていないから、不安になる。
暗いところは嫌いだ。
苦手じゃない。
だけど、嫌い。
怯えを見せずにあたしは堂々と中に入っていく。
こいつよりも先に。
「ちょっとぉ、置いて行かないでよねぇ?」
その口調がイラつくこと、本人は分っていなさそう。