その手に錠をはめるまで
『その時にお前がなりたいと思った奴に、心の中でもなりきれ』
ああ、そうだったね。
だって・・・・・・。
『そうできなければお前は壊れる』
壊れるなんて。
あたしは今でも信じていない。
あの人の言葉のほとんどは信じられる言葉なのに、あたしはこの言葉だけは信じられないんだ。
あたしはあたし。
あたしじゃない奴は、例え元々があたしだってもあたしの中に入れたくない。
あたしという思考は、あたしだけが持っていればいい。
あたしだけのものだ。
だから、その忠告は受け付けられないよ。
「じゃ、じゃあ、お邪魔します」
控えめな声は似合わないと思いながらも、あたしは中に入っていく。
やっぱりここは暗い。