その手に錠をはめるまで



「ラン!


おはようっ」



いや、今夜なんだけど。


ランと呼ばれた男はあたしから目を逸らさずに、ああ、とだけ言う。


ルイがあいさつしたようだけど、あしらわれているよね?


あたしもあいさつした方がよかったりするのかな?



「どうもです」



一言念入りに声を低くして、あたしは呟いた。



「っ、ラン相手に“どうもです”って・・・・・・」



はんっと鼻で笑うリツは見なかったことにする。


ウザいから、ね。



「お前、入れよ」



は?


何こいつ。



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