その手に錠をはめるまで



「お前、入れ」



沈黙を破ったのは、沈黙の原因の奴。



「入れって、何にですか??」



とりあえず、あたしの方を見て言っているのだから聞くことにしよう。



「・・・・・・今ならまだ間に合うよ?」



間延びしないルイの声が聞こえてきて、あたしは若干驚きながらもルイを見つめる。


何に間に合うっていうの。



「そうだ。


まだ、間に合う。


この世界をよく知ろうとしない奴が入れば、痛い目にあうのは確実。


お前はきっと弱そうだし、入らない方がいい」



いや、あのさ、まだあたしの実力なんてもの見てないでしょ?


リツの言葉にムッとして、あたしは顔を赤くする。



「っ、弱そうって、なんでですか!


そりゃあ、平均よりも背は低いですけど!」



< 34 / 169 >

この作品をシェア

pagetop