その手に錠をはめるまで


なんでそんなに無条件に俺らを信じてくれるんだ。


そう言いたそうな彼らの目に、男はふっと息を漏らした。



「見ていたから」



一言、呟いて。


売りさばいていた薬を回収し終えて、男は踵を返して通りに消えて行った。



「なぁ、俺らなんでこんなことしてんのかなぁ」



寝転がった男たちは呟く。



「正義になりたかったのに、正義とは程遠い世界に来てしまったよな」



「もう、抜けださねえか?」



「こんな世界、俺たちには合わねぇんだ」



最後のその言葉に一斉にうなずく彼ら。


そうだ、それでいい。


通りに消えて行ったと思っていた男は、路地付近に隠れながら微笑まし気にうなずいていた。



< 42 / 169 >

この作品をシェア

pagetop