その手に錠をはめるまで
なんでそんなに無条件に俺らを信じてくれるんだ。
そう言いたそうな彼らの目に、男はふっと息を漏らした。
「見ていたから」
一言、呟いて。
売りさばいていた薬を回収し終えて、男は踵を返して通りに消えて行った。
「なぁ、俺らなんでこんなことしてんのかなぁ」
寝転がった男たちは呟く。
「正義になりたかったのに、正義とは程遠い世界に来てしまったよな」
「もう、抜けださねえか?」
「こんな世界、俺たちには合わねぇんだ」
最後のその言葉に一斉にうなずく彼ら。
そうだ、それでいい。
通りに消えて行ったと思っていた男は、路地付近に隠れながら微笑まし気にうなずいていた。