その手に錠をはめるまで



『響姫ちゃん、響姫ちゃんっ』



名前を呼ばれた少女は、真っ白なそこにいた。


音が鮮明によみがえり、両親の死を思い出させる。


いいや、まだ死んでいないのかもしれない。


その思いにかけて少女は名前を呼んだ女性に問う。



『お母さんと、お父さんは・・・・・・?』



それを聞いた女性は答える代わりに目を伏せた。



『そ、っか。


あたし、死にたい』



呟かれた言葉に、病室にいる大人たちは慌てふためく。



『ダメだ、生きるんだよ、君は!』



『お母さんもお父さんもいないのにっ、あたしにそれでも生きろって言うのっ!?』



< 6 / 169 >

この作品をシェア

pagetop