その手に錠をはめるまで



「そ、っか」



もし、もし。


考えたくはないけど、Rが存在しなかったら?


あたしは何をすればいいの?



「そういえば、響姫は俺を捕まえないよな」



何気なく呟かれた彼の言葉。



「別にあたしは偽善者なんかじゃないから。


悪いことは悪いかもしれないけど、それは必要悪。


だけど、それを許せない人もいるわけで。


あたしは雨に何か嫌がるようなことをされた覚えはないし、協力してもらっているんだから捕まえない。


警察だからって、あたしには何もできないんだから」



警察。


あたしは俗に言う“正義の味方”。


もちろん、警察なんてただドロドロしていて罪のなすりあいをしているだけだ。


みんなが想像するほど甘い世界じゃない。


優しい世界じゃ、ない。



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