その手に錠をはめるまで
今日も雨の言葉1つであたしたちの関係が変わるところだった。
そんなのダメ。
せめてあたしが奴らに錠をかけるまで。
雨がそんなあたしを少し悲しそうに見ていたこと、あたしは気づかなかった。
うんん、気づけなかった。
雨の顔がいつも通り過ぎて、鉄壁なまでの表情筋は、そう簡単に動くことを知らない。
雨がどんな思いでいるのか、あたしには分からない。
もともと人が苦手なあたしにとって、対人関係は最悪そのもので。
そんなあたしが人の考えを読み取るだなんてそう易々とはできない。
「んじゃ、今日もうまい飯をありがとな」
ご飯を食べに来ただけの人みたいになっている雨に、あたしはくすりと笑う。
「ふふっ、また来ればいいんじゃない?」
また来てね、とはさすがに言えない。
だから、またね。