その手に錠をはめるまで


唐突に聞こえた背後からのその声に、あたしはピクリと体を揺らす。


それと同時にさっと声の正体から離れる。


どうしてあたしの背後に回っているのっ。


あたしが後ろを振り向く前まで、彼の存在感というものを感じていたのに。


それでいてあたしが振り向いてからも感じる存在感。


あれは背後からきているようなものじゃなかった。


実際にあそこにいたかのような・・・・・・。


今だって気づかなかった。


どうして?


どうして?


疑問だけが先走って、口を開くことさえままならない。



「ふふっ、怖くなっちゃったぁ~?」



怖いなんてことはない。


ただその理屈と原理を教えてほしい。


どうして存在感をなくせたの?


あなた、何者?



< 70 / 169 >

この作品をシェア

pagetop