その手に錠をはめるまで
唐突に聞こえた背後からのその声に、あたしはピクリと体を揺らす。
それと同時にさっと声の正体から離れる。
どうしてあたしの背後に回っているのっ。
あたしが後ろを振り向く前まで、彼の存在感というものを感じていたのに。
それでいてあたしが振り向いてからも感じる存在感。
あれは背後からきているようなものじゃなかった。
実際にあそこにいたかのような・・・・・・。
今だって気づかなかった。
どうして?
どうして?
疑問だけが先走って、口を開くことさえままならない。
「ふふっ、怖くなっちゃったぁ~?」
怖いなんてことはない。
ただその理屈と原理を教えてほしい。
どうして存在感をなくせたの?
あなた、何者?