その手に錠をはめるまで
それなら仕方ないねと腹をくくったあたしは、はいとうなずく。
「はっ、レイ、お前は何者だ?」
軽く笑った彼は、あたしにそんなバカバカしい質問をよこす。
バカじゃないの?
少しはましだと思っていたけど、結局はその程度。
だからあたしが幹部入りすることも許されたんだろうけど。
「俺はただの弱い人間です」
さっきと同じように答えて、今日はもう帰ろうかと思案する。
でも、そうさせないのが彼、ランである。
「レイはいい答えを出しやがる」
静かに言ったその言葉は、なぜだかあたしの奥まで入ってきて。
少し息が苦しくなっていてようやく、あたしたちが繁華街の注目を集めていると知った。
周りを見ないところはあたしの悪いところだ。
そう言われていたのに。
こんなにもすぐに忘れているだなんて、気を抜いていた証拠だ。
相手よりも有利な位置に立てたって、油断は禁物。
こんなこと初歩の初歩だ。
この隙を突かれることもある・・・・・・痛い程に。