君じゃなきゃ
君じゃなきゃ ⭐拓海side
明かりの落ちたカウンターバーで、俺のとなりで酔いつぶれている奴……。七瀬真沙(ななせ まさ)俺の高校からの同級生。で、男と女の友情があるとすれば俺達は飲み友達。高校卒業してから、こうして二人で飲むのは年に数回ある。

だいたい俺の方から呼び出してるんだけど、いつも都合つけて来てくれる。

俺達は二人してザルなため、飲みはじめるといつも長い。

そして、いつも俺の愚痴をけちょんけちょんに言いながらも聞いてくれる真沙。

なんで、けちょんけちょんに言うかって?

それは……、まぁ、俺が浮気性だから……。

大学生になって一人暮らしを始めてから、いつの間にか俺は女のいない生活が出来なくなり、とっかえひっかえ付き合い、そのうち二股、三股が当たり前になって……。

そういうことやってるから、当然女とのトラブルも起こるわけで。

そんなとき真沙に会って、こうして飲みながら女関係の愚痴を吐き出してる。

真沙もよく飽きずに聞いてくれるよな。

で、今日もお決まりの別れるとかどうとかで揉めてる女の話をしていたところ………。

俺も今年で27歳になるし、そろそろこんなことやっていたら駄目だよなあ。……って分かってはいるんだけど。

俺の思いを寄せる奴は全く俺に興味が無いらしく、その上、俺を男として見ていないんだよね。

こうして俺の隣で無防備にぶっ倒れてるし……。



時刻は0時をまわろうとしている。

完全にノックアウトって感じで、カウンターに伏している真沙。
ショートの栗色のくせっ毛が頬にかかってる。


珍しいよな、真沙が酔い潰れるなんて。
そう言えば、いつも俺の話ばかりで真沙のことほとんど聞いたことないや。
何かあったか?
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