君じゃなきゃ
どう言うことだ?

「私、いつもいつも見栄はってばかりで、強い女みたいに思われて、でも、本当はかわいい女の子みたいに、弱く甘えたり泣いたり。そういう風になれたら……なりたいって思っていた。」

「うん。」

「高校のときだって、彼氏とか作ってベタベタするのは女の子ぽくって私には無理だった。誰かの事が好き、とか楽しそうに話す女の子の会話もダメだった。でも、奥手とか思われるのも嫌で男に慣れてる風に強がっていた。いかにも経験ありの顔して……。」

「うん。」

「でも、本当は誰よりも奥手で経験もない。好きな人に好きとも言えない。遠くから見ているだけ……。」

「うん。」


「……最近、気づいちゃったんだよね。やっぱり好きな人に好きな気持ち自分から言わないと伝わらないって……。でも、今さらどうやって言っていいのか分からないし。そいつは、根っからの女好きで経験も豊富で私とは天と地のさがあるし……。」

「……う、ん?」

「経験無いことバレたら引かれると思ったら、言えなくて。だからつい、手慣れてる振りしてるけど、いつも心臓バクバクいってるし。」

「…………。」

「かっこいいとか、強いとか、全部見せかけで、本当は残念な女なの。……言っちゃった……。」

「うん。」

「……もー、笑われてもいいから言う。
………………拓海が……好き……。」

そう話終わるとようやく真沙は顔を上げた。
涙でぐちょぐちょになった顔。
上向きに俺を見る目が艶っぽくて…………。

俺はなにも言わずに真沙を抱きしめた。体と体かギュッとくっついて体温も心臓の音も何もかもが伝わった。
俺の息があがる。
真沙の息もあがっている。

俺は真沙の柔らかい髪に口づけをして真沙の香りを吸い込んだ。
身体中が痺れるような感じがして、俺はもっと強く真沙を抱きしめた。

真沙があんなこと話すから、もう俺は真沙の全てが可愛くてやっぱり好きで真沙が欲しくてたまらなくて。
でも、こんな俺をずっと好きでいてくれた真沙を壊したくなくて。
あんなにたくさんの女を簡単に愛してきたのに、どうしたら真沙を上手く愛せるのか分からなくて、俺はなぜか泣いていた。
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