君じゃなきゃ
「……拓海、泣いてるの……。拓海……。」

情けない。俺は真沙の顔を見れない。
真沙を抱きしめたまま真沙の髪に顔を埋めたまま、俺は泣いた。

「拓海、顔を見せて、お願い。」

真沙はそう言うと俺の肩を押し上げた。

俺は涙でぐちょぐちょになった情けない顔を真沙に見られた。

「なんで拓海が泣いてるの?どうして?」

真沙がさっきまで泣き腫らしていた瞳を俺に向けてくる。

「……俺も真沙が好きだ……。でも……真沙は俺なんかにはもったいないよ……。俺なんかどれだけ女と遊んだか……。情けないよ……。
真沙のこともっと早く大切に思っていれば、こんなことしてこなかったかな……」

「………………。」

もう俺、情けない姿を見られてる、そう思ったら……

「俺、きっと高校のときから真沙の事が好きだった。そんな気持ちに気付かないふりしたり、焦って強引に責めすぎて失敗した。だから、もう真沙には俺なんか見てもらえないと思ってた……。

本当の愛しかた一番分かってないの俺だよ……きっと。

でも今さら、やっぱり真沙の事が好きって……言ってもいいのかな。」

俺は恥ずかしくて真沙の顔がまともに見れなかった。

なんなんだよ!……俺って情けない。

本当に大切な人が目の前にいるって言うのに、どうしたらいいのか分からない……!

「拓海。」

真沙が甘い声で俺を呼ぶ。
いつもとは全然違う、甘く優しい囁くような声。

ゾクッと体が痺れるような感じかした。

顔を上げると、艶っぽい真沙の顔。


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